トラブル事例から学ぶM&A その1

西川 大介

日本M&Aセンター 成長戦略開発センター長/株式会社ネクストナビ 取締役

M&A全般
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巷では時折耳にする、M&Aに関するトラブル。 「M&Aは三方良しと言っても、実際はどうなの?!」と皆さんも気になる点かと思います。 そんな皆さんの不安、トラブル事例をご紹介しながら解説していきたいと思います! こちらは、M&A仲介会社を入れずに交渉を行ったとある売主さんから聞いた話です。 交渉は円満に進んだように見えましたが、最終局面で決裂してしまいました。 買主: 「買収監査の結果を踏まえて株価条件の引き下げをお願いしたい。 想定していたノウハウ・知見・体制が不足していることが判明した。提示頂いていた、決算書には表現されていない、引当・償却不足、含み損、余剰在庫、回収不能債権なども確認された。 回収不能債権や余剰在庫の存在は事前に言うべきだ。弊社グループになった場合の管理体制強化に必要な費用もコストアップになるので、株価に反映したい。 また、社長には、本件実行と同時に、役員を完全に退任して頂きたい。」 売主: 「そこまで色々と指摘され、株価も減額されるのは心外である。買収監査前に言うべきではないか。 そのようなことは考慮の上、株価を提示されたものと思っていた。提示された株価の前提条件が不明である。自分は当面、取締役会長として残り、従業員・会社を見守りたい。」 どちらも譲れない主張であったこと、 また、このようなやり取りをしているうちに双方の信頼関係が崩れ、 M&Aは成約に至らなかったそうです・・・

どうして双方の主張が行き違ってしまったのか?

“専門家”の重要性

この例では、双方の主張・思惑に相当な隔たりが見受けられます。 M&Aは、買主と売主が各々の目的の実現を目指して協議を進め、成立します。 その一方で、M&Aプロセスのあらゆる局面にトラブルの種(リスク)が潜んでいるのです。これらを事前に予期して適切な準備・対策を講じることが、リスク排除につながり、M&Aを成功に導きます。 リスクを排除するためには、M&A推進の経験・ノウハウの有無がポイントになるんですね。 経験と実績のある専門家は経験やノウハウに裏打ちされたM&Aのセオリーを有しています。このような専門家なしに交渉を進めていくことは、未経験者が飛行機やロケットを操縦するようなもの・・・非常に危険なことがお判りになりましたか?

M&Aプロセスで起こるトラブル:案件化作業の欠如(プレM&Aフェーズ)

上記の事例は、M&Aプロセスにおいてどのような問題があったのでしょうか。ここでは、売主側に絞って説明します。 売主は、M&A交渉プロセス開始前(プレM&Aフェーズ)に、対象会社の情報をしっかりと整備していくことが重要となります。単に書類・情報を集めるというだけでなく、不足しているものは整備し、時には、会社の実態を分かりやすく買主に理解してもらうために、集計・分析作業も必要です。 その際、M&A特有の情報も多いので専門家のサポートは不可欠です。 トラブルの半分以上はこの案件化作業に何らかの問題があります。 案件化作業に不足があり、買収監査を通じて買主が把握していないネガティブ情報が多々発見されると、買主社内での対象会社に対する印象が悪化し、両者間の株価調整も難航します。 事前に伝わっていれば問題にならなかったのに・・・案件化はM&Aプロセスにおいて最も重要といわれる所以はここにあるのです。

専門家が行う案件化とは?

専門家が案件化を行う場合のポイントをご紹介していきましょう。 ポジティブな情報は買主に効果的に伝わるように整理をします。特に、事業面・組織面・財務面の強みを整理していくことになります。 一方、ネガティブな情報は問題点を明確にし、可能な限り対応策を検討しておきます。可能なものは買主との接触前に治癒してしまえばよいでしょう。治癒の方法を誤ると取り返しがつかない場合もありますので、専門家に良く相談して下さい。 弊社が売主様を担当させて頂く場合、案件化はサポート体制を最も厚くしているプロセスの一つです。経験・ノウハウが物をいう分野であり、創業来25年以上の蓄積を最大限に活用しています。

M&Aプロセスで起こるトラブル:交渉でのハンドリング(M&Aフェーズ)

案件化の後は、いよいよ買主への提案・交渉に入ります。 ここで重要なことは、情報が外部に漏洩することのないよう、買主候補に対する情報提供プロセスを徹底管理することです。その上で、案件化によって整理された情報をもとに対象会社を効果的に説明します。 何よりも大事なことは、ご紹介したトラブル事例のようにならないよう、買主から売主への情報提供(M&Aの目的・基本スキーム・株価条件・M&A後の経営体制・従業員の処遇)の充足性・妥当性と当該情報に対する売主の理解度を、専門家によってしっかりハンドリングしてもらうことです。 買収監査後に株価の減額を要請される場合、予め明確にされた調整ルールに従って、売主も覚悟の上で減額を受けるのとそうでないのとでは、M&A成約への影響は全く異なってきます。 また、言いづらいことや分かりづらいことを放置するのは絶対にNGです。買主からのオファー内容について、“本音で”専門家に質問・相談しましょう。 M&Aは相手がいることですので、自身の都合・意向を主張するだけではなく、常に相手の立場に立って話を聞く姿勢は売主・買主に関係なく最も重要な点であることは覚えておいてください。

トラブルのないM&Aプロセスのために・・・

経験を積みノウハウを持った専門家を活用して正しいプロセスを踏んでいけば、M&Aにおいてトラブルは発生しません。発生したとしても、解決できるケースがほとんどです。最高のマッチングを成約に導くために、専門家にぜひご相談ください。

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著者

西川 大介

西川にしかわ 大介だいすけ

日本M&Aセンター 成長戦略開発センター長/株式会社ネクストナビ 取締役

大手プラントエンジニアリング会社(海外プラント建設)、Big4系コンサルティングファーム(PMI等)、大手証券会社(M&Aアドバイザリー)を経て、2010年に当社に入社。通算20年近いM&A実務経験に強み。現在、上場会社グループに特化してM&Aサービスを提供する部門を率いる。事業ポートフォリオ再構築プランやM&A戦略の立案サポートから、クライアント毎のオーダーに基づく案件オリジネーション、交渉・実行サポートを行う。弊社において、大型案件、複雑案件、及びノンコア切離し案件をリードする。

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